猫のチョコレート色の毛色は、TYRP1(チロシナーゼ関連タンパク質-1)遺伝子または「ブラウン」遺伝子座の変化によって生じる。TYRP1はチロシンがユーメラニンに変換されるメラニン生成の最終段階に関与する酵素をコードしている。
猫のチョコレート色の原因となる変異体は、B>b>blの対立遺伝子系列の一部である。B対立遺伝子は黒色を呈する野生型の表現型に対応し、b対立遺伝子はチョコレート色の色合いを呈する。最後にbl対立遺伝子はシナモンの表現型となる。b対立遺伝子、特にc.1261+5G>A T変異体の2コピーがチョコレート色の被毛を発現するのに必要である。この変異体が1コピーでも存在し、それがbl(シナモン)対立遺伝子のコピーと複合ヘテロ接合体であれば、チョコレート色の表現型が得られる。bl対立遺伝子のコピーがない場合、b対立遺伝子の単一コピーはチョコレート表現型を発現しないが、50%の確率でネコの子孫に遺伝する。
茶色の被毛を持つ猫について興味深い事実は、この色合いの原因となるTYRP1遺伝子の変異が、目の健康にも影響を及ぼす可能性があるということだ。虹彩に含まれるユーメラニンの量が少ないため、茶色の猫は目の色が薄く、場合によっては強い光に敏感になることがある。